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日外会誌. 111(3): 156-159, 2010


特集

外科とリスクマネジメント

5.内視鏡外科治療

富士宮市立病院 

木村 泰三

I.内容要旨
内視鏡外科手術の医療事故が近年増加しつつある.手術偶発症や合併症は,不十分な準備や未熟な手技による場合や,発生後の対応が悪く患者に大きな被害を与えた場合などに,医療事故と呼ばれる.日本内視鏡外科学会のアンケート調査では,胆嚢摘出術では胆管損傷(0.68%),開腹を要した出血(0.58%),他臓器損傷(0.29%),胃癌手術では術中偶発症0.84%,術後合併症3.8%,小腸大腸切除では,術中術後合併症6.74%などが集計された.修復のため術中あるいは術後に開腹を必要とした例も多く,死亡例も49例あった.内視鏡手術の偶発症の特徴は,解剖の誤認,視野外操作,電気メス熱傷,鉗子操作による損傷がみられることである.また,出血も開腹止血を必要とするようなら偶発症とされる.内視鏡手術の偶発症·合併症は事故とされやすい.さらに,手術はビデオ収録されているので,未熟な操作は誰の目にも明らかになる.偶発症·合併症の減少のためには,教科書やセミナーによる基礎知識と標準術式の習得,トレーニングボックスやシミュレーター,また動物実験による技術訓練,手術難度による術者決定,指導者の技術認定取得,開腹移行閾値の低い設定,最良の機器や器具の使用などが重要である.また,医療事故を民事や刑事の訴訟にしないためには,術前に十分なインフォームドコンセント(自施設での成績開示など)を行い,事故後にすばやく適切な対応(第3者を含む事故調査委員会設置など)をとることである.

キーワード
内視鏡外科, 偶発症·合併症, 医療事故, リスクマネジメント, インフォームドコンセント

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