[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (335KB) [会員限定]

日外会誌. 110(6): 333-337, 2009


特集

胸膜中皮腫の治療法の動向

4.胸膜中皮腫の診断―胸腔鏡と腫瘍マーカー―

順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器外科

鈴木 健司

I.内容要旨
悪性胸膜中皮腫は予後不良の悪性腫瘍であり,治療は困難を極める.集学的治療または手術単独療法のいずれにしても高いリスクを伴う治療法である.間違ってもその治療後に胸膜中皮腫の診断が慢性胸膜炎など非癌病変に取って代わるような事態は避けなければならない.すなわち確定診断がきわめて重要といえる.胸膜の疾患が臨床的に疑われるのは,胸水貯留か胸膜肥厚,またはその両方である.胸水貯留の場合は胸水の精査でかなりの情報を得ることができる.胸膜肥厚の場合は胸水からの情報は限られるが,造影胸部CTからの情報が悪性と良性を鑑別する上で有用である.ただし,いずれにしても確実な診断が治療上必須であることを考慮すると,十分な検体をもっての組織学的な確定診断が望まれる.その際胸腔鏡での診断がもっとも適したものである.その合併症発生率は低く,高い特異度と感度で診断が可能である.その胸腔鏡での診断は手技としても簡便であるが,その後の治療法を考慮した配慮も重要である.胸膜肺全摘を引き続き行う場合は,その部位を全層に摘除することが肝要で,また内科治療であれば放射線治療が生検部位での再発率を下げることが示唆されている.また非侵襲的な診断法である腫瘍マーカーに関しては,mesothelinなど有望なマーカーが最近発見されている.大規模な前向き試験での有用性の確認がなされているがより感度と特異度の高いマーカーが望まれるところである.

キーワード
胸水, 胸水穿刺, 造影胸部CT, mesothelin


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。