[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (276KB) [会員限定]

日外会誌. 109(3): 152-156, 2008


特集

消化器神経内分泌腫瘍の診断と治療

7.下部消化管神経内分泌腫瘍の診断と治療

東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科学

樋口 哲郎 , 杉原 健一

I.内容要旨
下部消化管神経内分泌腫瘍は,本邦では低異型度低悪性度腫瘍群のカルチノイド腫瘍と高異型度高悪性度腫瘍群の内分泌細胞癌に大別される.大腸カルチノイド腫瘍の大部分は直腸に発生し,大きさ10mm以下のものが多い.低悪性度として扱われるカルチノイド腫瘍だが,転移能を有していて臨床的に問題になるのはリンパ節転移の有無を術前にいかに正確に行うかであり,これにより治療方針の決定がなされる.原則的に10mm以下で深達度SMまでで脈管侵襲のないものは,リンパ節転移の可能性は低く,内視鏡的切除か外科的局所切除が行われる.10mmを超えるものは,原則的にはリンパ節郭清を伴う腸管切除術を行うべきであるが,発生部位によっては直腸切断術と人工肛門造設術が必要な症例もあるため,局所切除術を先行させ病理組織学的検索後,追加切除の適応を決めた方がよい症例もある.一方,大腸内分泌細胞癌は大腸癌と比較して生物学的悪性度が非常に高いため,進行が早くまた増殖能が高いため早期より脈管侵襲をきたし,リンパ節転移,他臓器転移をきたす予後不良の腫瘍である.大腸癌のなかでの頻度は1%以下であり,まれな腫瘍であるが,病理生検や手術材料の病理組織学的検査で内分泌細胞癌を疑わせる充実性癌胞巣を認めた場合は,鍍銀染色や神経内分泌マーカー免疫組織学的染色を行い,正確な診断をすることが重要である.診断時に同時性の遠隔転移を伴っていることが多く手術療法だけではなく,化学療法,放射線療法などを組み合わせた集学的な治療戦略が必要となる.しかしいまだ確立した治療方針がないのが現状である.

キーワード
カルチノイド腫瘍, 神経内分泌細胞癌


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。