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日外会誌. 108(2): 69-72, 2007


特集

大動脈弁膜症における人工弁の選択―機械弁か生体弁か―

4.年齢からみた人工弁の選択

東京慈恵会医科大学 心臓外科

橋本 和弘

I.内容要旨
現在,日本において選択可能な人工弁は機械弁と生体弁であり,生体弁はさらにstentとstentless弁に大別される.すでに患者に機械弁が入っている場合は機械弁を選択することは必須であるが,それ以外は年齢が最も大きい要因であり,さらに患者個人の背景,意思が大きく影響する時代となった.日本循環器学会ガイドラインではClass IIaとして64歳以下には機械弁が推奨されている.一方,血栓塞栓症のリスクの低い65歳以上の患者には生体弁が推奨されている.しかし,64歳以下でも挙児を希望する女性,抗凝固療法に抵抗を示す患者には再手術の可能性を話した上で,生体弁の選択も可能であるとしている.生体弁の寿命は年齢に大きく依存し,若年患者ほど長持ちしない.術後15年で生じる弁構造破壊の確率が大動脈弁位では45歳で32%あるのに対し,65歳では9%程度である.ただし,現在使用されている生体弁の歴史が20年にやっと達した状況であり,今後の遠隔成績は不明である.長寿国である日本において,65歳で明確に振り分けてよいものかは疑問のあるところである.また,日本人においては機械弁に必須とされるワルファリンでの抗凝固療法による出血性合併症の発生率が低いこと(血栓塞栓症発生率は生体弁と同じ)が指摘されていることもあり,個々の患者の生活背景,意思,心機能,合併疾患,余命を十分に考慮し,検討されるべき時代となった.

キーワード
人工弁, 生体弁, 機械弁


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