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日外会誌. 107(4): 173-176, 2006


特集

膵癌治療―最近の動向

4拡大手術は生存率向上に寄与するか?

名古屋大学大学院 医学系研究科腫瘍外科

梛野 正人 , 二村 雄次

I.内容要旨
膵癌の治療成績は他の消化器癌に比べ極端に不良である.この難治性癌に対し,本邦の外科医は,広範囲リンパ節・神経叢郭清を伴う拡大手術により予後の改善が得られると考え,ひたすら拡大手術を追求・実践してきた.しかし,無作為比較試験(RCT)によりその意義が科学的に証明されている訳ではなかった.1998年と2002年欧米から,“拡大手術の意義は無い”とするRCTが相次いで報告されたが,拡大手術の方法に問題があったので,本邦においても標準手術と日本式の徹底した拡大手術を比較するRCTが行われた.(予想に反し?),標準手術と拡大手術で生存率に有意差は無く,また,術後半年以内のQOLは拡大手術群が有意に不良であった.この結果から,膵頭部浸潤性膵管癌に対して徹底した神経叢郭清や大動脈周囲リンパ節を含む広範囲リンパ節郭清を行う拡大手術の意義はないと結論できる.このように,膵頭部癌に対する拡大手術の意義は否定されつつあるが,根治を期待しうる治療法は依然として外科的切除のみであり,これが否定されたわけではない.あくまでも肉眼根治切除を心がけることは当然であり,必要であれば門脈切除・再建などは今までどおり積極的に行うべきである.

キーワード
膵頭部癌, 浸潤性膵管癌, 拡大手術, 標準手術, 生存率


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