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日外会誌. 106(6): 395-399, 2005


特集

肺癌の拡大手術と縮小手術―その評価と展望

7.肺癌拡大区域切除の成績と適応

兵庫県立成人病センター 呼吸器外科

岡田 守人 , 坪田 紀明

I.内容要旨
切除可能な非小細胞肺癌に対する標準治療は肺葉以上の肺実質切除と系統的肺門縦隔リンパ節廓清であり,この考えは激増している末梢小型肺癌に対しても未だに世界的に標準と認識されている.しかしながら,手術成績の向上と高齢化社会の到来は多発癌の増加を呼び,診断機器の進歩は早期癌の発見を容易にした.このような状況の中で根治性とQuality of lifeの両者を考慮しない肺癌手術はもはや受け入れ難いと考えられる.果たして本当に肺葉切除が一律に必要であろうか.
腫瘍径2cm以下の臨床病期IA期末梢型肺癌に対する積極的縮小手術である拡大区域切除は術中迅速病理診断を駆使することによって早期肺癌を選別し,葉切除と同等の根治性を得ながら肺機能を温存しようとするものである.1992年に行われた多施設共同研究をはじめとして,最近は一定の基準による症例選択と厳密な術中検索による積極的縮小手術の有用性を支持する報告は多い.さらに近年,術前画像所見による原発巣の質的診断を加える試みも始まった.小型肺癌の中から非浸潤性早期肺癌を術前に予測することができれば,縮小手術の標準化を加速させることができよう.このような縮小手術への流れは肺癌外科治療の一大転機を示すもので,その発展が大いに期待される.

キーワード
肺癌, 区域切除, 縮小手術, 小型肺癌, 胸腔鏡


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