[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (73KB) [会員限定]

日外会誌. 106(4): 297-301, 2005


特集

進展様式に基づいた消化器癌手術のこつと工夫

6.進展様式に基づいた膵癌手術のこつと工夫―膵頭十二指腸切除術における膵頭神経叢切除の理論と方法―

山形大学医学部 器官機能統御学講座消化器・一般外科学分野(第1外科)

木村 理

I.内容要旨
通常型膵癌の治療戦略はさまざまであっても,「外科的に膵癌を取りきる治癒切除術をすること」は基本中の基本である.つまり膵癌外科治療の到達目標は,局所の完全切除である.膵頭神経叢第I部・第II部,膵後方浸潤,上腸間膜動脈周囲神経叢はTreitzの癒合筋膜で覆われた同じ空間に存在する構造物である.神経に親和性を持ち,神経叢にそって浸潤する傾向が強い膵癌の局所の完全切除のため,以下の2点を提言する.
提言1.上腸間膜動脈神経叢の右にある膵後方の神経・結合織,膵頭神経叢第I部・第II部に切り込まないようにするため,上腸間膜動脈を最初にテーピングし,上腸間膜動脈神経叢の右半から,それより右にある膵頭神経叢第I部・第II部を含めた膵後方神経組織をen blocに郭清し,切除する.このとき,上腸間膜動脈にかけたテープを上腸間膜静脈の背面を通してSMAをSMVの右側にもってくるのがコツであり.神経叢が非常にみやすくなり,郭清がやりやすくなる.
提言2.数cm以上に縦長に及ぶ神経叢を切離するときにすべての断端を迅速病理組織診断に供し,癌陽性の時には神経叢や結合織の追加切除をおこない治癒切除を遂行する.

キーワード
膵頭神経叢第I部, 第II部, 上腸間膜動脈周囲神経叢, en bloc切除, 迅速病理組織診断


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。