[書誌情報] [全文PDF] (2187KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 105(10): 674-679, 2004


特集

肝切除・部分肝移植後の肝再生と肝不全-基礎と臨床-

7.肝移植後肝再生のメカニズム

1) 北海道大学大学院 医学研究科置換外科・再生医学講座
2) 北海道大学病院 臓器移植医療部
3) 北海道大学大学院 医学研究科外科治療学講座消化器外科・一般外科
4) 北海道大学 医学部保健学科

陳 孟鳳1) , 嶋村 剛2) , 谷口 雅彦3) , 長佐古 良英3) , 鈴木 友己1) , 神山 俊哉3) , 松下 通明4) , 古川 博之1) , 藤堂 省3)

I.内容要旨
当科の生体肝移植ドナーのデータでは,肝容積の再生率は残肝容積の小さな右葉グラフトドナーで左葉グラフトドナーより大きかった.ドナーではグラフトの種類にかかわらず術後2週までに肝機能の回復が得られたが,この時点での肝容積の復元率は右葉グラフトドナーで65%,左葉グラフトドナーで80%であった.すなわち,ドナー残肝の機能的再生は形態学的再生より早期に得られる.
同様にレシピエントの術後4週目の肝容積再生率に影響する有意な因子はグラフト容積のみで,小さいグラフトほど術後4週目の肝容積再生率が大きかった.しかし,肝容積の再生率が大きいものでは門脈圧・門脈血流量とも有意に高く,容積の増大は単に肝の腫大を見ている可能性がある.事実,これらでは血小板数が低く,減黄も明らかに遅延していた.すなわち,とくに小さなグラフトを移植されたレシピエントでは,肝容積の増大と機能的な肝再生が必ずしも一致せず,形態学的再生に比べて機能的再生が遅れることを示している.
劇症肝炎患者に対する補助的同所性部分肝移植(APOLT)での自己肝の経時的な組織学的検索から,自己肝の再生はcytokeratin17陽性の胆管系ductuleを起源とする幼弱肝細胞より起こり,ほぼ1年で完成することが判明した.

キーワード
living donor liver transplantation, liver regeneration, donor, recipient, auxiliary orthotopic liver transplantation


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。