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日外会誌. 105(10): 669-673, 2004


特集

肝切除・部分肝移植後の肝再生と肝不全-基礎と臨床-

6.肝切除後肝不全の病態と対策-硬変肝

大阪市立大学大学院 消化器外科学・肝胆膵外科学

久保 正二 , 田中 宏 , 首藤 太一 , 竹村 茂一 , 上西 崇弘 , 田中 肖吾 , 広橋 一裕

I.内容要旨
肝硬変症の病態は全身循環におけるhyperdynamic state,有効肝血流量の低下,門脈圧亢進症,糖・蛋白など種々の代謝異常,網内系機能低下,血小板減少症などが特徴である.このような症例においては,たとえ切除肝が小さくても,肝切除後肝不全に陥ることがある.この際,肝炎ウィルスなどによる活動性肝炎,肝線維化を背景として,大量出血による循環動態の変動およびそれに伴う大量輸血や輸液,肝脱転操作や長時間に及ぶPringle法などによる肝内循環障害,感染症の併存などが発症要因となる.したがって,術前の肝予備力や肝炎活動性の把握が重要で,ICG検査を主とした種々の評価法が報告されている.また,肝不全予防として,ドーパミン,プロスタグランディンE1やヒドロコルチゾンの投与が行われている.肝不全に対し,分枝鎖アミノ酸などの輸液,肝庇護療法,血漿交換などが試みられるが,その有効性は症例によって異なり,いまだ確定していない.肝硬変症例における肝切除後肝不全は一旦発症すると根本的な治療はなく致命的であることが少なくないため,肝硬変症に伴う合併症の検索と術前の肝予備力や肝炎活動性の評価およびそれに基づく手術適応,術式決定による肝不全防止が最も重要である.

キーワード
肝切除, 肝不全, 肝硬変, 活動性肝炎, 肝予備力


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