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日外会誌. 105(5): 321-324, 2004


特集

外科医のアイデンティティーをより高める

2.医師・外科医養成システムの問題点とわが国の医療レベル

藤田保健衛生大学学長 

船曳 孝彦

I.内容要旨
外科専門医と消化器外科(胸部外科,呼吸器外科…)専門医の呼称についても,どれぐらいの幅で外科専門医といえるのか,どれくらいの症例数で専門医といえるのか,あるいは他科専門医との釣り合いなどに問題点はあるが,これについては何処かで線を引かねばならない.
臨床医学水準から見るとき,二重造影,ファイバースコープの開発に始まる早期胃癌研究が牽引車となって,日本の癌外科は世界の最先端を歩んできた.一般の外科医のレベルは決して低くはない.それには学会での手術映画・ビデオの演題により,大学間,医局間の壁,徒弟制度を越えて皆が自由に手術を勉強したことによる.外科医たるもの技術に溺れることなく,常に向上心を持って,解剖学的知識,疾患の十分な理解と方針,さらに強い責任感を持って手術をすることであり,『上手い手術』でなく『良い手術』を目指して欲しい.ビデオなど見ていてそこからヒントが得られるよう,常に『考える外科医』であって欲しい.一つの具体的方法としては,外科医を目指したときから全ての手術記事を書くことをお勧めする.
診療はEBM,マニュアル,DPCなど大きく括れば画一的へと向かっている.患者さんは性,年齢,病気,併発症など全て異なっている.診療過誤等のないように遵守するにせよ,どうすれば患者さんのためになるか一旦は考えて行動して欲しい.目を世界に向け医学の進歩,変化を見逃さずに日本の医療を支えて欲しい.

キーワード
良い手術, 考える外科医, 手術記事, マニュアル, EBM


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