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日外会誌. 105(5): 315-320, 2004


特集

外科医のアイデンティティーをより高める

1.特集によせて

東海大学 医学部外科

田島 知郎

I.内容要旨
外科志望者が減少し,外科医の職場が3K状態の悪循環に陥っていることから,外科医療の衰退,ひいてはわが国医療全体の崩壊さえ懸念される.外科医のアイデンティティーを高め,医学生を魅了するための戦略を考えるのがこの特集の主眼であるが,外科志望者減少の問題に速効的な対応法があるわけではなく,わが国医療の根源的なところにまで立ち入らなければ,この問題を解決する目処さえつかない.医学教育の段階での問題点も含めて,筆者の先生方にカバーしていただく課題や問題は多様で,それぞれの根が深く,医療界のタブーに関わる部分も少なくない.わが国の医療をこれ以上に悪化させないために,また外科医のアイデンティティーをこれ以上に矮小化させないために,外科医がまず出来ることは,毎日の診療の中で襟を正し,有効性のある検査や医療に徹することである.単価上昇などによって個々の医療機関の収支面に寄与しようとする試みは長期的にはわが国医療を崩壊させる方向に作用する.プロ集団として自浄作用を率先して発揮して,医療改革をリードするに相応しく,かつ力のある団体は日本外科学会以外にはほとんど見当たらない.会員の諸兄姉が,わが国医療の問題点に目覚め,望ましい方向に医療改変をリードできれば,わが国を医療立国にまで高めることさえ夢ではない.

キーワード
外科医療, 外科卒後研修, 専門医制度, 医療費, 手術報酬


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