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日外会誌. 103(9): 583-587, 2002


特集

難治性心不全に対する外科的アプロ一チ-最近の進歩-

4.両心室ペーシング

東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所 循環器内科

笠貫 宏 , 松田 直樹

I.内容要旨
慢性心不全患者ではしばしばQRS幅の拡大を認め,重症例の約半数は左脚ブロックやQRS幅0.12秒以上の何らかの心室内伝導障害を有している.左室内伝導障害は,左室収縮の時間的ずれを招き,収縮能の低下,拡張期左室流入の減少,僧帽弁逆流などの血行動態の不利をもたらす.これを是正する目的で両心室ペーシングが注目されている.具体的には右室心尖部と左室自由壁から同時ペーシングを行い左室リードは冠静脈洞を介し冠静脈分枝に留置する.両心室ペーシングの急性効果として,左室収縮期最大dP/dt,収縮期血圧,脈圧の有意な増大,拡張期左室流入時間の延長,肺動脈模入圧の低下がみられる.重症心不全患者に両心室ペースメーカーを植込むことにより,自覚症状,血行動態,運動耐容能,QOL,心エコー所見,神経体液性因子などの有意な改善が認められる.その適応は必ずしも確立していないが,NYHA III度またはIV度の重症心不全で,左脚ブロックあるいは左室内伝導障害を有し,QRS幅150ms以上の例でその効果が最も期待できる.

キーワード
両心室ペーシング, 心不全, 心室内伝導障害, 心臓再同期療法


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