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日外会誌. 103(9): 588-593, 2002


特集

難治性心不全に対する外科的アプロ一チ-最近の進歩-

5.Transmyocardial Laser Revascularization (TMLR)

東京女子医科大学日本心臓血圧研究所 心臓血管外科

西田 博 , 黒澤 博身 , 遠藤 真弘

I.内容要旨
Transmyocardial Laser Revascularization(TMLR:経心筋レーザー血行再建術)とは,高出力レーザーを用いて作成した心筋を貫通するチャネル周囲の血管新生により虚血心筋の間接的血行再建を期待する新しい治療法である,重症末期虚血性心疾患に合併した難治性心不全治療におけるTMLRの役割は以下のようにまとめることができる.
まず,必要条件として冠動脈バイパス術(CABG)も経皮的冠動脈形成術(PTCA)も不可能な冠動脈病変を有する相当範囲の虚血が存在し,この領域の心筋灌流の改善により心機能の改善が見込める可逆的な心機能低下であることがあげられる.TMLR自体の侵襲は小さく,欧米の認可条件にも左室駆出率(LVEF)の下限は特に設定されていない.欧米の無作為割付比較試験の結果からLVEF20%までは全く問題なく施行可能と考えられる.また,CABGとTMLRを併用するadjunctive TMLRは血行再建度を高める意義に加え,手術リスクを軽減させることも実証されており,低左心機能例におけるCABGの成績向上に寄与する可能性もある.一方,低左心機能例に対してTMLRを施行する際には積極的なIABPの使用や不整脈対策など慎重な周術期管理を徹底することが重要である.また血管新生によると考えられているTMLRの効果発現には数週間を要するとされていることから術後の適切な薬物治療の継続も必須であろう.高度心機能低下例で上行大動脈病変や他臓器機能不全などの併存症により通常のCABGのハイリスク例と考えられる症例では,MIDCABやoff pump CABGとTMLRの併用が有効な治療手段となろう.

キーワード
経心筋レーザー血行再建術


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