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日外会誌. 103(6): 468-471, 2002


特集

癌の分子診断学-ここまで進んだ診断・治療への応用-

4.大腸癌

九州大学生体防御医学研究所 外科

三森 功士 , 森 正樹

I.内容要旨
分子生物学を応用した大腸癌の診断は,低侵襲かつ高い特異性を有することが望ましい.ここ最近の報告の中では,糞便中のAPC突然変異検出が早期大腸癌の発見に有用であることやCEA・CKなどを標的遺伝子とした骨髄・末梢血液中の微量癌細胞検出の意義が注目されている.
大腸の癌化・進展の分子機構はよく知られているが,各段階で重要な遺伝子が癌の悪性度にどの程度関わるかは十分に理解されていない.たとえば,adenoma carcinoma sequenceに関してAPC, K-ras, p53等が予後因子ともなりうるかについては一定の見解が得られていない.一方,アポトーシス関連遺伝子,増殖因子,接着因子,プロテアーゼなどの中には有用な予後予測因子として報告されたものがあるが臨床応用を念頭に置いた場合,これらの遺伝子群を包括的に判断することが今後は特に重要となるであろう.
分子生物学を応用した治療法は,p53やFHIT遺伝子のような癌抑制遺伝子の遺伝子導入による抗腫瘍効果を期待するほかに,最近注目されているのはCOX2阻害剤celecoxibや,プロテアーゼMMP阻害剤Batimastatなどがある.また,実験的にはEGFR阻害剤が驚異的な抗腫瘍効果を示すなど興味深い報告もある.さらに従来の補助化学療法の抗腫瘍効果を高め副作用を軽減するために,5-FU感受性を予測する新たな方法や,樹状細胞ワクチンによる腫瘍免疫療法などの治療法も注目を集めている.しかし実際に広く臨床応用されるには至っておらず,これらの治療の一日も早い実用化が望まれる.

キーワード
fecal DNA, APC, MSI, FHIT, micrometastasis, prognostic factors


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