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日外会誌. 103(5): 390-396, 2002


特集

生体肝移植の現況と展開

2.成績とQOL
1)小児生体肝移植長期生存症例におけるQOL

1) 名古屋市立大学 小児・移植外科
2) 名古屋市立大学 第1外科

橋本 俊1) , 中村 司2) , 鈴木 達也1) , 近藤 知史1) , 棚橋 義直2) , 真辺 忠夫2)

I.内容要旨
生体肝移植の成績を評価する一手段として,自施設で施行した生体肝移植患児のうち6年以上の長期生存中の9例に関しretrospectiveに診療録から患児の成長,通院,入院記録を検索し,肝機能,免疫抑制療法の状態をもとに日常生活の質,量を検討した.患児の成長に関しては回復傾向は示すものの平均を上回ることは少なく,体重では女児が平均値を概ね推移するのに対し,男児の増加が意外に少なかった.従って,成長は肝移植により回復を示すものの正常域からは外れる可能性が示唆された.通院,入院の日数は移植前にくらべると減少しているが9年目でも完全に解放されるわけではなく,周期的に回数が増える傾向があった.また,免疫抑制剤は9例中3例で離脱可能であったが1例で再投与が必要であったり,ステロイド長期使用による副作用が2例に見られた.血液型不適合症例における肝機能検査では特にアルカリフォスファターゼ値の変動が大きく,抗ドナー抗体は認めなくなるものの今後も経過観察が必要である.長期経過中の合併症としてイレウスによる再開腹術があり,帯状庖疹ウイルス感染が3例にみられた.結果,肝移植により成長は改善し,来院日数などは移植前とくらべると大きく改善しているものの,完全に解放されるものではなく,ウイルス感染症に対するワクチン接種,成長の障害にも考慮した移植時期の決定も今後は必要となるものと考えられた.

キーワード
小児, 生体肝移植, QOL, 長期生存, 血液型不適合


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