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日外会誌. 102(10): 753-757, 2001


特集

胃癌治療の最近の進歩と今後の問題点

5.早期胃癌に対するSentinel node navigation surgeryの適応とその意義

1) 慶應義塾大学 医学部外科
2) 慶應義塾大学 医学部放射線科
3) 慶應義塾大学 医学部病理診断部

北川 雄光1) , 久保田 哲郎1) , 大谷 吉秀1) , 古川 俊治1) , 吉田 昌1) , 藤井 博史2) , 久保 敦司2) , 向井 萬起男3) , 熊井 浩一郎1) , 北島 政樹1)

I.内容要旨
20世紀における診断・治療標準化の成果により,早期胃癌症例の遠隔治療成績がほぼ一定の高いレベルに達した現在,いかに少ない侵襲で同様の遠隔成績を保つことができるかが焦点となっている.具体的には従来標準的切除郭清術が施行されてきた症例にいかに安全に内視鏡的胃粘膜切除術もしくは腹腔鏡下手術を適用できるかが課題である.その際の最も重要な判断因子は微小リンパ節転移の有無であるが,術前の画像診断でこれを正確に診断することは極めて困難である.そこでこれまでは主に深達度,病理組織型などの間接的情報による予測に基づいてわずかでも微小転移の可能性が否定できない場合には定型的根治術が採用されてきた.近年,微小リンパ節転移を術中高感度に検出できる画期的な手法としてSentinel node navigationが登場し,早期胃癌においてもこれを応用した縮小治療の合理的適応拡大に向けた検討が開始されている.腫瘍から最初にリンパ流を受けるリンパ節であるセンチネルリンパ節(Sentinel node, SN)を的確に同定する技術が確立され,これを指標としたリンパ節転移診断が可能であれば,理論的には転移陰性例についてはリンパ節郭清を省略し局所切除術をもって根治術とすることができる.また,近年注目されている早期胃癌を対象とした腹腔鏡下胃切除における適切なリンパ節郭清範囲を考慮する際にもSNの分布は重要な情報となる.現在,胃癌におけるSN理論の妥当性そのものの検証,適切なトレーサーの選択,トレーサーの投与方法,内視鏡下手術への応用,術中迅速診断の精度など臨床応用にむけた問題点の解決が精力的に行われている.その手法や臨床的位置づけが確立するにはまだ時間を要するものの,早期胃癌の治療体系に一定の変化をもたらす可能性を秘めた手法として期待されている.

キーワード
早期胃癌, センチネルリンパ節, 微小転移, 低侵襲手術, リンパ節郭清


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