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日外会誌. 102(6): 477-483, 2001


特集

リンパ節の癌転移病態と至適郭清

6.食道癌における至適リンパ節郭清

慶應義塾大学 医学部外科

北川 雄光 , 安藤 暢敏 , 小澤 壮治 , 北島 政樹

I.内容要旨
食道癌は粘膜癌においても粘膜筋板に達するものではリンパ管侵襲,リンパ節転移を認め,粘膜下層(以下sm)浸潤癌では,約半数にリンパ節転移を認める.また,その分布は頸部から腹部に至るまで広範囲におよび,これを外科的に制御するためには頸・胸・腹3領域郭清が必要であると考えられてきた.その適応や遠隔成績改善効果についてはその導入後十数年を経てなお議論の対象となっているが,胸部上部食道癌については予後改善効果を有するとする報告が多い.また,頸部郭清そのものよりも3領域郭清導入により両側反回神経周囲を含む上縦隔郭清が徹底して行われるようになったこともその要因として指摘されている.胸部下部食道癌でも頸部リンパ節転移を認めるが頸部転移例の予後は極めて不良な場合が多く,一般的には胸部上部ないし中部のm3~sm1以深の症例が3領域郭清の適応とされる.一方,深達度m2までの粘膜癌に対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR)が標準治療となっており,その治療侵襲の差があまりに著しいために,表在癌に対しては化学放射線療法を施行する.あるいはEMRに何らかの付加治療を施行する方向性も模索されている.また,近年注目されているSentinel node(SN)の概念を食道癌に適用した場合, SNは複数,症例によっては主病変から解剖学的に離れた部位に存在することが判明した.SNが個々の症例における「機能的1群リンパ節」と考えることができる.したがってこれを標的とした重点的郭清,放射線照射野の決定,またSNの転移状況に応じた郭清範囲の決定など,これまで画一的に行われてきた食道癌のリンパ節郭清を個別化する方向性に期待が寄せられている.

キーワード
食道癌, リンパ節郭清, 3領域郭清, センチネルリンパ節, 微小転移


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