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日外会誌. 102(5): 385-389, 2001


特集

大腸癌肝転移に対する治療戦略-基礎から臨床へ-

5.大腸癌肝転移-肝切除の適応と成績-

国立がんセンター中央病院 外科

森谷 宜皓 , 藤田 伸 , 赤須 孝之 , 島田 和明 , 山本 順司 , 小菅 智男 , 山崎 晋

I.内容要旨
70年代半ば,肝転移切除の有効性が腫瘍学的に裏付けられ,CT,超音波の登場により一気に普及した.15年間418例の肝切除を対象に適応と遠隔成績を検討した.肝転移に対する切除頻度は52%と高く全手術の10%に当たる.残肝再発率が34%肺再発が29%であった.原発癌病期,腫瘍径,再発時期,転移個数, TW,CEA,2次進展の各因子で有意差が出た.多変量解析ではTW陽性と肝外病変の重みが大きく原発癌病期に差は出なかった.核出や部分切除が71%を占め,系統的切除は29%であった. しかし転移巣はGlisson鞘内脈管に親和性が高く肝内脈管に近接したり圧排性に発育していれば当該Glisson鞘は合併切除すべきである. 5生率は42%, 10生率は31%であった.適応の限定要因として転移個数は大きな比重を占める. 4個以上群でも24%の5生率と長期生存20例を得たことは, 3個までに適応を限定する論拠が全くないことを意味する.しかし4個以上の症例に無制限に適応拡大を許すことを意味しない.多発転移群では複数の要因が加わり適応を複雑化するため,共通の基盤で成績が評価できるCRS構築は手術の適正化と残肝再発と肝外再発抑制に対する補助療法の確立に不可欠と言える.CRSの追試は再発高危険群設定の可能性を示唆した.

キーワード
大腸癌肝転移, 肝切除, clinical risk scoring (CRS)


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