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日外会誌. 102(5): 381-384, 2001


特集

大腸癌肝転移に対する治療戦略-基礎から臨床へ-

4.血管新生因子の意義と治療への応用

金沢大学 がん研究所腫瘍外科

高橋 豊 , 磨伊 正義

I.内容要旨
癌の増殖,転移には血管新生の成立が不可欠であるが,大腸癌の肝を初めとする転移にも同様である.著者らは,血管新生の指標である血管密度や,血管新生因子の一つであるVascular endothelial growth factor(VEGF) が,転移や再発と強く相関することを報告してきた.また, VEGFのレセプターの一つであるKDRの血管内皮上の発現による,VEGF/KDRのレセプター/リガンドシステムが存在することも報告してきた.以上から,大腸癌における血管新生を標的とした治療としては,抗VEGF抗体とVEGF receptor tyrosine kinazeが考えられるが,これらはすでに転移性大腸癌で臨床試験が始まっている.それによると,標準治療とされる化学療法剤との併用で,有意な縮小率の上昇と,TTP(time to progression) の延長が得られている.いずれにしても,血管新生とは増殖や転移を促進するものであるため,これを阻止する薬剤の主目的は,腫瘍を殺すことではなく,増殖や転移を抑制する,すなわちtumor dormancyを誘導することである.このことを理解した上で,今後大腸癌の肝転移の治療の一つとしての抗血管新生治療を位置づけてゆく必要があると考えられる.

キーワード
血管新生, Vascular endothelial growth factor (VEGF), 抗 VEGF抗体, VEGF receptor tyrosine kinaze, Tumor dormancy


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