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日外会誌. 102(5): 370-375, 2001


特集

大腸癌肝転移に対する治療戦略-基礎から臨床へ-

2.癌関連遺伝子の大腸癌肝転移への関与と臨床応用

福井医科大学 第1外科

山口 明夫

I.内容要旨
大腸癌肝転移形成には複数のステップが必要であり,多くの癌関連遺伝子が重要な役割を担っている.癌遺伝子ではerbB2や低分子量G蛋白,癌抑制遺伝子のなかではnm23, DCC, DPC4などが大腸癌肝転移に関与するとして報告されている.これらは増殖,接着,細胞運動などに影響を及ぼすことによって,転移機構の各ステップに深く関わっていることが推察されているが,その詳細は明らかでない.臨床例を用いた研究にて肝転移との間に相関がみられ,さらに予後推定にも役立つとされている.またE-カドヘリンとカテニン,糖鎖とセクレチンおよびCD44などの接着分子は癌細胞の原発巣からの離脱,運動能の亢進,血管への進入,肝内皮細胞との接着など転移過程の多くのところで重要な役割を演じていることが知られている.これらは肝転移のマーカーとなりうるとともに,その抗体や低分子アナログを用いた転移抑制の治療にも臨床応用可能となることが期待される.

キーワード
大腸癌肝転移, 癌遺伝子, 癌抑制遺伝子, 接着分子


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