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日外会誌. 102(2): 232-235, 2001


特集

肝膵同時切除術(HPD)をめぐって

8.HPDの手術の工夫

信州大学 医学部第1外科

宮川 眞一 , 川崎 誠治

I.内容要旨
1999年12月までに22例の進行胆道癌患者(広汎型胆管癌13例,進行胆嚢癌7例,その他2例)に対し肝膵同時切除(HPD)を施行した.うち18例は尾状葉合併拡大肝葉切除+膵頭十二指腸切除(PD)であり,区域切除以下の肝切除+PDを4例に施行した.尾状葉合併拡大肝右葉切除が予定された17例に門脈左枝塞栓術を施行し,肝左葉の容積は全肝容積の31.5 ± 4.2%から43.5 ± 6.9%に増加した.22症例では術後30日以内の手術死亡はなく,また入院死亡も認められなかった.術後,全入院経過を通じて,血中総ビリルビン値の最高値は空腸脚壊死症例が再開腹術後7.0mg/dlになった以外,他の21例では5.0mg/dl以下であったが,術後血中総ビリルビン値が2.0~5.0mg/dlの範囲で遷延した症例が1例のみあった.膵臓の再建は膵胃吻合を4例に施行し,2例に膵胃吻合部の縫合不全を認めたが,保存療法で軽快している.これ以降の症例18例では二期的膵空腸吻合法を選択した.広汎型胆管癌症例で尾状葉合併拡大肝葉切除+PDが行われた11例の1年,3年,5年生存率は90.9%,64.9%,64.9%であった.広汎型胆管癌は尾状葉合併拡大肝葉切除+PDにより長期予後が期待できるので,このような症例を術死,入院死等で失わないために拡大肝葉切除+PD施行時には門脈塞栓術と二期的膵空腸吻合術を併用することが望ましいと思われる.

キーワード
門脈枝塞栓術, 二期的膵空腸吻合術, 広汎型胆管癌, 尾状葉合併拡大肝右葉切除術, 膵頭十二指腸切除術


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