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日外会誌. 102(2): 226-231, 2001


特集

肝膵同時切除術(HPD)をめぐって

7.臨床成績からみたHPDの評価

慶應義塾大学 医学部外科

相浦 浩一 , 島津 元秀 , 高橋 伸 , 北島 政樹

I.内容要旨
我々の施設で行われた14例のHPDの臨床成績を中心に振り返り,進行胆道癌に対するHPDの評価を試みた.主として胆嚢癌と胆管癌がHPDの対象となるが,我々は悪性胆道疾患に対して膵頭部周囲リンパ節郭清を目的としたPDは行わず, HPDでなければ外科的切除ができない高度進行症例に対して主にHPDを適応としてきた.しかしこのような症例では,根治性に限界があり,58.3%はcur Cに終わっており,cur Aとなった症例は1例(7.7%)のみであった.1例に門脈合併切除を,2例に肝十二指腸間膜切除を併施したが,いずれもcur Cに終わった.遠隔成績をみても耐術した胆嚢癌,胆管癌症例では,胆管癌の1例(9カ月無再発生存中)を除いてすべてが2年以内に癌死した.再発形式からも推察されるように,我々がHPDの適応としてきたような高度進行症例では,手術時すでに微小転移が広く存在し,局所の切除だけでは限界があることが示唆された.HPDを受けた患者の生存期間に対する術後総入院期間の割合についての検討からは,生存期間の延長とともにその割合は減少したが,その平均は61%であり,少なくとも1年以上の生存が得られない限り余命の大部分を病院で過ごすことを強いられ,術後QOLは満足するものとは言い難く,HPDのような拡大手術は意味がないと考えられた.すなわちHPD適応の方向性を考えた場合, HPDでしか外科的切除することのできない高度進行症例を対象とするよりは,むしろそれより早期の段階が適応になってくる可能性が考えられた.しかし,術後早期合併症では,全体で35.7%に重篤な合併症が発生しており,肝切除量が右葉切除以上になった場合は66.7%にみられ,術後高率に発生する合併症の観点からも手術術式の安全性を追求し,適応の決定は厳密に行われる必要があると考えられた.

キーワード
肝膵同時切除術, 胆囊癌, 胆管癌, 乳頭部癌, 膵頭部癌


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