[書誌情報] [全文PDF] (2546KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 101(6): 449-453, 2000


特集

下部直腸癌における機能温存手術の適応と限界

4.低位前方切除術

藤田保健衛生大学 医学部消化器外科

前田 耕太郎 , 丸田 守人 , 内海 俊明 , 佐藤 美信 , 松本 昌久

I.内容要旨
低位前方切除術の適応は,主に病変の局在部位,壁深達度,組織型,肉眼型などによって決定する.術前には,肛門指診で恥骨直腸筋の上縁より2cm程度を確保できる症例を適応の目安とし,腫瘍下縁より肛門側切離端までの距離(AW)が分化型癌で限局型の壁深達度A1までの癌では1cm,より低分化癌やA2以深の癌では,骨盤隔膜までの直腸間膜を十分に切除して2cm以上の距離を確保して腸切除を行い肛門括約筋が温存できる症例を適応とする.非限局型の癌やリンパ節転移の高度な癌などでは,さらに距離を確保する.早期癌では,TMEを行なえば5mm程度のAWで十分と考えられるが,さらに症例を集積して検討する必要がある.限界と考えられる症例での最終的な適応の決定は,術中に確実な手術操作で直腸周囲の剥離が終了し,AWの距離が十分確保できる症例に限定すべきであり,これらの症例が実際の適応の限界となる.術後の大腸肛門機能などの面からは,術前肛門括約筋機能の不十分な例,寝たきりの高齢者などは適応から除外すべきである.残存直腸長は可及的に歯状線より1~2cm残した方が術後機能も良好であるが,限界の症例では,結腸嚢作成の適応も考慮する.

キーワード
直腸癌, 低位前方切除術, 肛門機能温存手術, Stapler anastomosis, Double stapling technique


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。