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書誌情報]
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日外会誌. 101(6): 444-448, 2000
特集
下部直腸癌における機能温存手術の適応と限界
3.術前照射を併用した自律神経温存手術
I.内容要旨下部進行直腸癌症例を対象とし,根治性を得ることと同時に術後機能障害を減少させることを目的として術前照射・化学療法を併用した自律神経温存手術を行ってきた.術前照射・化学療法の適応症例は,腹膜餓転部以下の進行癌で深達度Al’・SS’以深の症例である.この治療法を施行し根治度Aであった症例について,その術後機能と予後について検討した.根治度Aの84例中76例(90.5%)に自律神経温存手術が行われ,自律神経温存術式では両側温存が60.5%,片側温存が34.2%,部分温存が5.3%の頻度であった.なお,全症例にD
2~D
3のリンパ節郭清が行われている.術後1~2年の時点での排尿機能では,排尿機能障害は認めるものの全例ともに自己排尿が可能であった.これは骨盤神経叢が一部でも温存されるなら,自己排尿が可能であることを示すものである.また,術後の60歳以下の男性性機能において両側温存術式でErectionの保持が73.3%,Ejaculationは53.3%の症例に可能であったが,片側温存ではErectionが66.7%,Ejaculationは25.0%の症例に保持できたにすぎない.この結果より十分な性機能を温存するためには,自律神経の両側温存が望ましいことを示すものであった.これらの術前照射・化学療法併用の自律神経温存例の予後を無再発生存で検討すると,5年および10年の無再発生存率は80.7%を示し,従来の拡大郭清手術を行った症例の成績に比較して劣らない結果である.そして心配される局所再発であるが,局所再発率は7.9%であり局所再発はある程度抑制されていると考えられる.本治療法にはまだ解決されなければならない点も多く残される.術式の改良や適応の問題をさらに慎重に検討していくことや,新たな補助療法の併用も考慮する必要がある.
キーワード
下部進行直腸癌, 術後排尿機能, 術前照射・化学療法, 術後性機能, 自律神経温存術
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