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日外会誌. 100(12): 787-790, 1999


特集

大腸早期癌に対するminimally invasive surgeryの基礎と臨床

5. Transanal Endoscopic Microsurgery(TEM)

久留米大学 医学部外科

山崎 国司 , 白水 和雄

I.内容要旨
近年,食生活の欧米化に伴い成人の大腸癌の発症率は急激に増加している.それとともに大腸早期癌の発見率も高まり,根治性を損なわず,より低侵襲な手術の必要性が唱えられている.結腸癌手術に関しては,腹腔鏡下手術の施行頻度は次第に高まり,その適応も次第に広がってきた.しかし,直腸切除術においてはその解剖学的特徴により腹部からの鏡視下手術は困難を極め,予期しない術後合併症の発症も懸念される.ことに,早期大腸癌においては,病理学的にその深達度や進展度に応じてリンパ節転移率が報告されるようになり,早期癌の一部には必ずしもリンパ節廓清をともなう必要のない症例もある.したがって,我々は早期直腸癌あるいは良性の直腸腺腫に対して経肛門的に腫瘍を切除するTransanal Endoscopic Microsurgery(TEM)を施行している. TEMは,腫瘍の進行度を十分に把握し,適切な適応を決定することにより,低侵襲でかつ根治性を確実にした安全な手術を施行することが可能となる.そのために,TEM適応の決定の際には術前の画像学的評価や十分な組織片を採取(生検)し病理学的にリンパ節転移の危険因子を評価しなければならない.今回,我々はTEMを直腸癌37例,カルチノイド4例,直腸腺腫12例に施行し,直腸癌症例のうち1例は術後摘出標本の組織学的検索にて危険因子陽性のため開腹根治手術を施行,2例は術中合併症にて開腹手術に変更した.残り50例は適切な術前の評価により,TEMの適応基準を満たしていた為,術後再発は認めず,根治的な手術が施行できたと考えている.このように,より安全に確実な根治手術を行うためには,正確な腫瘍進展の評価と習熟した技術が必要であり,日頃のトレーニングの積み重ねも忘れてはならない.

キーワード
早期直腸癌, 局所切除術, 低侵襲手術, 組織学的危険因子, Transanal Endoscopic Microsurgery(TEM)


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