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日外会誌. 100(11): 729-734, 1999


特集

肺癌治療の最近の進歩

7. 肺癌の重粒子線治療

放射線医学総合研究所 重粒子治療センター

宮本 忠昭 , 山本 直敬 , 西村 英輝 , 辻井 博彦 , 山口 豊

I.内容要旨
重粒子線は,優れた線量集中性と強力な抗腫瘍効果を有する.炭素線はこの2つの特性をバランスよく持つ治療ビームである.平成6年11月に開始した手術非適応・病期1期の非小細胞肺癌に対する炭素線治療は,フェイズI/II臨床研究として第1次(18回/6週間)と第2次(9回/3週間)に分けて行われ平成11年2月に終了した.第1次プロトコールでは47名の患者が,第2次プロトコールでは34名の患者が治療された.炭素線治療においても肺癌患者の安全性を規制する因子は放射線肺臓炎であることが明らかになり,線量増加法により18回/6週間の分割法下での最大耐容線量は95.4GyEであり,9回/3週間での最大耐容線量は79.2 GyEであることが判った.一方,第一次プロトコールにおける100%腫瘍制御線量は総線量85.6GyE以上で得られ,第2次のそれは総線量68.4GyE以上で達成された.Kaplan-Meier法による第1次プロトコールの5年生存率は57%となり,局所制御率が確実に向上している第2次プロトコールでは手術成績に劣らない生存率が予測されている.現在は,フェイズII研究へと進み総線量を72GyEに固定してさらによい結果を目指している.有害反応の少ない重粒子線治療は,高齢化社会の肺癌患者に適したやさしい治療手段であり21世紀の肺癌の治療に大きく役立つものと思われる.

キーワード
重粒子線治療, 炭素線, 非小細胞肺癌, 高齢者, QOL


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