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日外会誌. 100(11): 724-728, 1999


特集

肺癌治療の最近の進歩

6. 肺癌に対する気管支腔内超音波断層法

1) 国立療養所広島病院 外科
2) 岩国みなみ病院 外科
3) 県立広島病院 病理

栗本 典昭1) , 林 浩二1) , 村山 正毅2) , 西坂 隆3)

I.内容要旨
1994年から,軟性,硬性気管支鏡の鉗子口より挿入した細径プローブによる気管支腔内から走査する超音波断層法(Endobronchial Ultrasonography,EBUS)を開始し,現在まで940例を経験した.本法の適応は,1)気管,気管支腫瘍の深達度診断,2)肺門部腫瘍,肺動静脈との位置関係,浸潤診断,気管,気管支周囲のリンパ節描出,転移診断,3)肺末梢病変の位置診断,質的診断(良悪性診断)である.気管,気管支病変,扁平上皮癌を中心とする腫瘍性病変での深達度診断は,PDTを代表とする気管支内視鏡治療,また手術適応を決定するうえで,最も大切な所見であるが,今までは,気管支鏡での病変の長径,短径,高さなどからの統計的確率による予測が中心であった.今回,本法での気管支壁正常構造の画像と病理組織との対比による,層構造の同定のため針刺し実験を行い,続いて肺癌切除症例の超音波像と全割した病理組織所見との対比を行い,本法の深達度診断における有用性を検討した.針刺し実験で明らかになったことは,現在のラジアル式20MHzのプローブでは,肺外気管支軟骨部と肺内気管支は5層構造を示し,肺外気管支膜様部は3層構造を示すことである.これらの層の中で,肺外気管支軟骨部,肺内気管支での軟骨を示す第4層(低エコー)と,膜様部平滑筋を示す第2層(低エコー)は明瞭に指摘できることが多く,この層を追うことが正しい深達度診断を行うポイントと考える.24病変において超音波画像と病理組織所見の深達度診断が一致していたのは,23病変,95.8%であり,残りの1病変では超音波画像の方で過大評価していた.
気管支周囲リンパ節,肺末梢病変における本法の画像も呈示する.

キーワード
気管支腔内超音波断層法, Endobronchial Ultrasonography, 気管支壁深達度診断


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