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日外会誌. 100(7): 455-459, 1999


特集

救急医療における最近の進歩

9.救急医療と遠隔診療支援

1) 大阪大学大学院医学系研究科 生体機能調節医学講座 附属病院特殊救急部
2) 西武庫病院 外科
3) クマガイサテライトクリニック 
4) 緑風会病院 

植田 俊夫1) , 日田 新太郎2) , 熊谷 義也3) , 杉本 侃4) , 杉本 壽1)

I.内容要旨
大阪大学特殊救急部(以降当部)では顕微鏡画像や腹腔鏡手術映像電送等とは異なる発想からリアルタイム・双方向動画像電送装置(以降当該装置)を独自開発してきた.即ち,平成3年救急救命士(以降救命士)に係わる法律は整備されたが,医師ではない救命士の医学的判断能力には限界があり,また救急隊員の行為評価が結果主義でもあり,特定行為の迅速な実行決定過程は円滑ではない.また平成7年,8年,9年度の大阪市消防公表資料では,目撃者あり心肺蘇生術実施症例で,特定行為実施による1カ月後生存率の有意な向上は得られていない.この現状を踏まえ,救命率向上をめざし1997年7月以来当該装置を使用して当部から救命士の特定行為の迅速な開始を支援する研究に着手した.
ところが,研究開始時期には応用に適切な機器はなく,臨床的に使い易いことを最重要課題として当該装置(TMS-6101,日本光電ウエルネス株式会社製)を機器メーカーと共同開発した.当該装置では,動画像と音声の双方向的電送機器と,それらを記録する機器,バイタルサイン電送機器,映像切り替え機器等が一括制御されている.当該装置では映像電送に必要な殆どの機器が搭載され,市販テレビ会議システムを単に流用した場合とは異なり,新たな機器や配線の購入なしに複数種類映像を同時にそれぞれ当該装置に接続し,任意に映像を切り換え診療支援が実施できる.現状は,移動体である救急車を遠隔支援する無線インフラが未成熟であり,救急車支援実施に先立ち当該装置を当部関連5施設の臨床現場に導入した.1999年4月末までに当該装置を使用した種々の遠隔診療支援57事例を経験し,その臨床的有用性を確認した.更に,当該装置を1)僻地・離島医療 2)海外在留邦人救急医療 3)夜間民間一次・二次救急医療 4)大規模災害時医療に導入する展望についても述べた.

キーワード
救急医療, 遠隔診療支援, 救急救命士, リアルタイム動画像電送装置, 僻地・離島医療


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