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日外会誌. 100(6): 373-378, 1999


特集

最近の発生学研究が新生児臨床の進歩にもたらしたもの

3.ラット腹壁形成過程の免疫組織学的検討

昭和大学 医学部小児外科

岡松 孝男 , 鈴木 淳一

I.内容要旨
腹壁発生機序については未だ議論の多いところである.臍帯ヘルニアの治療が積極的に行われるようになった近年では,胎芽期における正常な腹壁形成機序を明確にすることが,治療成績向上に必須である.
われわれは,ラット胎仔を用いて胎芽期の胸壁,腹壁を経時的に検索し,部位による細胞増殖率の違いを検討した.胎齢12~15のラット胎仔腹壁および胸壁上皮をProliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)モノクロナール抗体の免疫染色により増殖細胞の経時的検索を行った.検索部位は胸壁,上下腹壁左右側腹壁の5部位で,細胞増殖率はPCNA陽性細胞数/領域全細胞数とした.その結果,1)上・下腹壁の正中付近で最も活発に増殖が認められ,2)側腹壁の細胞増殖率はやや低く,背側から上皮の多層化が進み,3)臍帯付近や羊膜との移行部では増殖細胞の増加は起こっておらず,4)胸壁上皮では比較的高い細胞増殖率を認めるも,胸壁と上腹壁ではPCNA陽性細胞数も出現パターンも全く異なっていることが判明した.すなわち腹壁上皮の供給源は左右側皺壁の融合点である上・下腹皺壁正中付近であり.胸壁の発生機序とは異なっているものと考えられた。

キーワード
Omphalocele, 腹壁形成, 免疫組織化学染色, Proliferating Cell Nuclear Antigen (PCNA), ラット胎仔

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