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日外会誌. 99(10): 722-727, 1998


特集

胆嚢癌治療-最近の動向

7.胆嚢癌に対する血管合併切除適応と治療成績

千葉大学 医学部第1外科

宮崎 勝 , 中島 伸之

I.内容要旨
進行胆嚢癌(stage III, IV)の外科切除における血管合併切除の意義とその治療成績を検討した.58例のstage lII, IV胆嚢癌切除例における血管合併切除は門脈が11例,肝動脈2例,下大静脈壁2例の計12例においてなされた.血管合併切除群(n=12)と非合併切除群(n=46)において組織学的治癒度を比較すると,根治切除率25% vs 61%と両群間に有意差を認めた(p<0.05).術後合併症においては合併症発生率は33%vs 28%と血管合併切除群に高い傾向を認めたが,術死,在院死率は両群共に17%と同率であり,血管合併切除による手術リスクの上昇は認められなかった.血管合併切除12例中,在院死した2例は1例が拡大肝右葉+胆管切除に門脈合併切除を行った例であり,他1例は拡大右葉+PDに門脈合併切除を行った例であった.術後生存期間はstage III, IV胆嚢癌切除58例中根治切除し得た29例の生存率は1年55.6%,2年43.3%,3年30.3%,4年20.8%,5年20.8%であったのに比し,非根治切除の29例では1年26.3%で2年以上の生存例はなかった.また血管合併切除を要さなかった46例の生存期間は1年45.3%,2年33.5%,3年23.4%,4年16.1%,5年16.1%であったのに比し,血管合併切除を行った12例の生存期間は1年22.2%で2年以上の生存例はなく,現時点で生存している3例は4カ月,4カ月,1年2カ月である.
以上の様に進行胆嚢癌における血管合併切除は手術死亡率の上昇はもたらさず施行し得るが,手術の根治性の向上には必ずしも寄与し得ず,その術後生存期間においても長期生存例を得る事は極めて稀と考えられる.従って血管合併切除を要する進行胆嚢癌に対しては,安全性を確保したより一層根治性を向上させ得る手術手技の確立および有効な補助療法の開発が必須のものと考えられる.

キーワード
胆嚢癌, 血管合併切除, 門脈合併切除, 外科切除


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