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日外会誌. 99(10): 728-732, 1998


特集

胆嚢癌治療-最近の動向

8.胆嚢癌に対する大動脈周囲リンパ節郭清の意義

1) 名古屋大学 医学部第1外科
2) 北海道大学 医学部第2外科

近藤 哲1)2) , 二村 雄次1) , 早川 直和1) , 神谷 順一1) , 梛野 正人1) , 金井 道夫1) , 上坂 克彦1) , 湯浅 典博1) , 佐野 力1)

I.内容要旨
胆嚢癌の大動脈周囲リンパ節転移の頻度および郭清の意義について解説し,最近のリンパ節郭清の動向についても考察して著者の考えを述べた.
大動脈周囲リンパ節郭清を伴う進行胆嚢癌切除例の7施設の報告例を検討したところ,大動脈周囲リンパ節の転移頻度は20~40%で,ss症例に限っても10~15%であった.また,リンパ節転移陽性例の30~50%には大動脈周囲リンパ節にも転移があることがわかった.大動脈周囲リンパ節転移陽性例の大部分は1年以内に死亡しており,3年以上生存したのは6%,5年以上は3%と成績不良であり,大動脈周囲リンパ節郭清が予後を改善しているとは言い難いという結果であった.今後は,転移陽性であっても郭清により長期生存を期待しうる数少ない症例を選別すること,長期生存を期待できない大部分の症例では転移陽性と診断された時点で根治切除手術の適応を再考すること,組織学的には検出できない微小転移が存在する可能性のあるn(+)かつNo.16転移(一)症例において大動脈周囲リンパ節郭清の効果を検討することが重要と考えられる.
現在進行胆嚢癌の根治手術においては,D2+大動脈周囲リンパ節郭清に加えPDを付加すべきとする考えとPDは必要ないとする考えがある.胆嚢リンパ流の主経路であるNo.12b2,12p2,8pなどの中継リンパ節から直接No.16a2, b1に至る経路を重視すればNo.13a,14への流れは副経路であり,主経路を郭清でコントロールできない現状では,副経路を侵襲の大きいPDを併施してまで郭清する意義は小さいとするのが著者らが主張してきたPD不要説の論拠である.新規約でいう「D3郭清(PD+16郭清が必要)」という言葉にとらわれることなく,D2+16を行うことが理に適っていると考えられ,extD2という呼称を提唱したい.

キーワード
胆嚢癌, リンパ節転移, 大動脈周囲リンパ節郭清, 膵頭十二指腸切除, 胆道癌取扱い規約


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