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日外会誌. 99(10): 687-695, 1998


特集

胆嚢癌治療-最近の動向

1.胆嚢癌における遺伝子異常とその生物学的悪性度

1) 新潟大学 医学部第1病理
2) 新潟大学 医学部第1外科
3) 東海大学 医学部病理

横山 直行1)2) , 渡辺 英伸1) , 味岡 洋一1) , 西倉 健1) , 伊達 和俊1)2) , 鬼島 宏3) , 白井 良夫2) , 畠山 勝義2)

I.内容要旨
胆嚢癌は組織発生からみた場合に,1)de novo発生癌,2)腺腫由来癌,3)膵管胆管合流異常合併癌(合流異常合併癌)の3種類に大きく分類されるが,癌関連遺伝子の異常もこの3種では異なった特徴を有しており,発生機序の差異を反映するものと考えられる.すなわち,癌抑制遺伝子p53は,de novo発生癌(61.5%)と合流異常合併癌(64.0%)の癌化に関与し,さらに前者の固有上皮一化生上皮一低異型度癌一高異型度癌という多段階の発生経路で,癌の異型度増加という段階にも関わることが示唆されている.しかし腺腫や腺腫由来癌でp53の蛋白過剰発現をしめす症例はなく,胆嚢のadenoma-carcinoma sequenceにp53の変異は関与しないものと考えられる.
癌遺伝子K-rasも, de novo発生癌では10%と低頻度ながら変異がみられたが,腺腫および腺腫由来癌では変異を認めたものはなかった.一方,合流異常合併癌のK-ras変異率は41.2%と, de novo発生癌および腺腫由来癌のそれに比して有意に高く,合流異常における特殊な癌化過程を示唆するものといえる.
遺伝子異常と胆嚢癌の生物学的悪性度に関して,胆嚢癌発生の早期段階では,p53変異の有無が細胞異型度や増殖様式と関連することから,悪性度を規定する可能性が示唆されている.一方,進行胆嚢癌において患者予後は,p53やK-rasの変異の有無とは相関しないとする説が現時点では有力である.ただし,議論の余地も多く残されており,病理および臨床と連携した,さらなる検討が必要と思われた.

キーワード
胆嚢癌, p53, K-ras

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