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日外会誌. 99(9): 589-594, 1998


特集

噴門部癌 : 診断と治療の進歩

10.噴門部癌の治療成績

癌研究会附属病院 消化器外科

太田 惠一朗 , 西 満正 , 植田 守 , 大山 繁和 , 松原 敏樹 , 高橋 孝 , 中島 聰總

I.内容要旨
噴門部癌は,従来,下部食道噴門癌や食道浸潤上部胃癌と一緒に論じられることが多く,必ずしも,噴門部癌としての特徴が明らかにされなかった.1949年から1994年までに,癌研究会附属病院消化器外科において根治切除の施行された,腫瘍の中心が食道胃境界部の上下各2cm以内に存在し,長軸方向の腫瘍径が8cm未満の腺癌172例を対象とし,前期(1949~1979年)79例と後期(1980年~1994年)93例とに分けて,歴史的変遷に注目して治療成績を検討した.腫瘍要因では,性差や組織型には変化がなかったが,後期ほど年齢の高齢化,食道浸潤例の減少,腫瘍長径の縮小が見られた.また,限局型や浸潤型などの進行癌の減少,早期癌の増加が見られ,進行程度はStageの早いものが増加した.一方,手術内容は,早期の症例が増加しているにもかかわらず,拡大化傾向にあり,胸腔内および大動脈周囲リンパ節が積極的に郭清されるようになった.進行程度ごとの遠隔成績は,Stage lは明らかに後期で予後が改善し,Stage llとIIIは改善傾向にあり,早期症例の増加が大きな要因であろうが,拡大郭清に伴うmicrometastasisの除去の効果も影響している.Stage lVは予後に変化がなく,今後の集学的治療の開発が期待される.切除範囲は,噴門部癌では,噴門側切除が基本であり,適応を誤らなければ予後は十分に期待できる.リンパ流,リンパ節転移状況や遠隔成績から,外側大動脈リンパ節は重要な郭清部位であり,胸腔内リンパ節も,早期の症例が増加し,腹腔内の再発が抑えられれば,十分に郭清効果が明らかにされよう.

キーワード
噴門部癌, 食道浸潤胃癌, 大動脈周囲リンパ節郭清, 胸腔内 (縦隔) リンパ節郭清, 治療成績の年代的推移


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