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日外会誌. 99(9): 581-588, 1998


特集

噴門部癌 : 診断と治療の進歩

9.噴門部切除不能癌の治療

東海大学 医学部外科

宮治 正雄 , 幕内 博康 , 生越 喬二

I.内容要旨
外科的切除不能の下部食道・噴門部癌に対する治療法,治療戦略を述べる.これまで当教室で経験した噴門部領域癌185例中,切除不能例は5例(2.7%)に認めた.いずれの症例も非治癒要因を二つ以上認め,化学療法を施行したがその成績は不良であった.
高度に進行した切除不能の噴門部癌患者においては一般的に全身状態が不良で免疫能も低下している.過度の侵襲を伴う外科的バイパス術は,合併症の発生も多く,その適応は十分に慎重であるべきと考えられた.一方,通過障害による苦痛や誤嚥性肺炎の発生に対してステント機器やデリバリーシステムの進歩・普及により合併症は低下しており,ステント挿入術の早期導入は有力な戦力となりうると考えられた.腫瘍の局所的なレーザー治療や免疫療法剤の局注療法,放射線治療の有効例も報告されており,全身的化学療法や免疫化学療法を組み合わせた集学的治療にも効果を期待したい.しかし,患者の予後は不良のため不必要に在院期間を延長することなく,患者とその家族に十分なInformed conscentの下に,在宅中心静脈栄養や緩和治療の導入をtimelyに行う必要があると思われた.

キーワード
噴門部癌, 切除不能癌, Self expandable metalic stent (SEMS), 内視鏡的治療, 集学的治療


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