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書誌情報]
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日外会誌. 99(9): 575-580, 1998
特集
噴門部癌 : 診断と治療の進歩
8.噴門部進行癌の治療
-とくに縦隔内進展とリンパ節転移について-
I.内容要旨噴門部癌の定義や治療方針に関しては確立した見解が明らかにされていないのが現状である.噴門部進行癌は縦隔内と腹腔内に位置するという特殊性があるため,その進展形式は多様である.今回,噴門部進行癌の縦隔内進展とリンパ節転移を中心に検討した.噴門部進行癌141例中117例は腺癌で24例は扁平上皮癌であり,治癒切除は114例に施行された.術前診断に関して,食道浸潤距離は超音波内視鏡により80%(16/20)が診断可能であった.超音波検査による腹部リンパ節転移診断は,sensitivityは85.1%,specificityは78.9%,accuracyは68.2%であり,とくに大動脈周囲リンパ節(No⑯)のtype分類は術式の決定に有用であった.開胸は62.4%に施行され,なかでも左開胸開腹例が高率であった.縦隔内リンパ節を郭清した27.9%(19/68)に転移が認められ,他のリンパ節転移状況をみると,全例が腹腔内リンパ節転移が陽性であった.またこれらの症例でNo⑯が郭清された13例中6例に転移が認められた.縦隔内転移陽性例の治療成績は不良であったが,その中で腹腔内リンパ節のうち胃周囲リンパ節のみに転移があり,総転移個数が少ないものに郭清効果が期待できる症例があると考えられた.No⑯転移は28.3%(15/48)にみられ,総転移個数は4例を除き10個以上であった.5年生存3例のうち,2例はn1(+)n4(+)で,リンパ節転移個数は5個以下であり, 転移部位はNo.16a
2 lateralの転移例であった.No⑯の予防的郭清の真の意義は不明であるが,この部位の微小転移例も報告されており,郭清後に初めて組織学的に転移が判明する症例や,微小転移例こそ郭清効果が得られる症例と考えられる.噴門部癌の治療にあたっては,的確な術前診断に基づいて,胸・腹部のバランスのとれた術式を選択することが重要なポイントである.
キーワード
噴門部癌, 縦隔内リンパ節転移, 大動脈周囲リンパ節転移, 超音波検査, 噴門部癌手術
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