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日外会誌. 99(9): 552-557, 1998


特集

噴門部癌 : 診断と治療の進歩

4.Barrett‘s食道

1) 千葉大学 医学部光学医療診療部
2) 千葉大学 医学部第2外科

神津 照雄1) , 吉村 清司1) , 大沼 エドワード・圭1) , 菱川 悦男2) , 有馬 美和子2)

I.内容要旨
食道粘膜が円柱上皮に置き代った状態を,今日ではバレット食道あるいはバレット上皮の言葉が使用されている.本病態が問題視される原因の一つはその生物学的特性にあり,高頻度に腺癌の発生をきたす背景粘膜としてとらえられている点である.本病態は逆流性食道炎の延長線にあり,急速に本邦でも注目されてきた.“バレット”の冠は紆余曲折を経て,Barrett NR(1950)による論文に端を発している.食道粘膜の円柱上皮化の成り立ちについては,動物実験の結果や臨床例の考察から食道扁平上皮の基底細胞層のmultipotential stem cellあるいは粘膜下層の食道腺の基部から発生するとの考え方が一般的になってきた.薬物治療に関しては,従来から酸性の胃液とアルカリ性の十二指腸液の混合が,食道粘膜にもっとも相乗的障害を引き起こすことが指摘されており,また最近のbile refluxの概念の導入もあり, proton pump inhibitorだけではバレット食道の退縮は望めないという考えが今日では一般的である.外科手術については良好な成績が得られるバレット食道の形態も明かになってきた.発癌に至る過程も,癌遺伝子・分子異常の研究からdysplasia-adenocarcinoma sequenceが認知される段階に来ている.バレット食道を背景とした食道癌の予後は,文献的に1生率は63%,2生率41%,5生率32%と報告されているが,バレット食道のsurveillanceの工夫の仕方で予後向上が.十分に期待できる.

キーワード
Barrett's esophagus, Reflux esophagitis, Adenocarcinoma of esophagus, Biliary reflux , Antireflux surgery


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