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日外会誌. 99(9): 558-563, 1998


特集

噴門部癌 : 診断と治療の進歩

5.噴門部早期癌の内視鏡診断

東京医科歯科大学 医学部光学医療診療部(第1外科兼任)

竹下 公矢 , 河野 辰幸 , 斎藤 直也 , 永井 鑑 , 谷 雅夫 , 本田 徹 , 井上 晴洋 , 矢野 謙一 , 林 政澤 , 佐伯 伊知郎 , 岩井 武尚

I.内容要旨
食道胃粘膜接合部(EGJ)から上下2cm以内の,いわゆる噴門部に中心を有する早期胃癌,食道表在癌の内視鏡診断と臨床病理学的特徴につき検討を加えた.対象は25例で,m癌10例, sm癌15例であった.肉眼型では隆起型が8例(胃1+α型4,Ila+Ilb型3,食道0-11),陥凹型(胃Ilc+α,食道0-Ilc)16例,平坦型(胃Ilb+Ila)1例であった.最近は陥凹型症例が増加しているが,その理由はこの部位に診断のHが行き届くようになったためと思われる.病変の平均最大径は早期胃癌の隆起型m癌が3.0cm, sm癌が3.0cm,また陥凹型m癌sm癌もともに1.4cmであり,病変の大きさと深達度との関係はなかった.陥凹型sm癌のほとんどが2.0cm以下であり,小さくてもsmへ浸潤しやすい傾向がうかがえた.食道表在癌でも大きさと深達度の関係は認められなかった.組織型では胃では分化型が多く,とくにm癌ではすべてを占めた.食道はすべて中分化癌であった.内視鏡所見としては,早期胃癌の陥凹型m癌は,淡い白苔を伴う易出血性の軽度陥凹した発赤びらんとして捉えられた.陥凹型sm癌では白苔を伴う明らかな陥凹と,陥凹内の穎粒状変化や白苔のはみ出しがみられるものが多かった.食道表在癌では,0-Ilc病変としての発赤とごく軽度のびらん性変化であり,ヨード染色で地図状,巣状の不染部に着目することが重要であった,噴門部早期胃癌,食道表在癌診断の要点は,前方視型パンエンドスコープを使用し,十分な送気による下部食道の詳細な観察と胃内挿入時の愛護的な操作が重要と思われた.とくに胃内反転観察と盲点のない生検を必ず行うことと,できればこの部位を内視鏡挿入時と抜去時の2回観察するよう心がけるべきである.

キーワード
噴門部癌, 早期胃癌, 食道表在癌, 食道胃粘膜接合部, 内視鏡診断


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