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日外会誌. 99(7): 463-468, 1998


特集

大腸癌:浸潤・転移の基礎と臨床

13.p53遺伝子導入の大腸癌治療への応用

岡山大学 医学部第1外科

藤原 俊義 , 田中 紀章

I.内容要旨
癌化の分子レベルでの解析は,正常細胞が癌細胞に至る過程での複数の癌関連遺伝子の異常の関与を明らかにしてきた.癌抑制遺伝子p53の変異は,大腸癌をはじめ最も高頻度にヒト悪性腫瘍で検出される遺伝子異常であり,臨床材料における変異の種類や頻度から生物学的意義まで広範囲にわたる研究が行われてきている.正常なp53遺伝子産物は転写因子として極めて多くの遺伝子発現を制御しており,この分子の変異が癌細胞としての悪性形質の発現に深く関わっていることが示唆される.最近の遺伝子導入技術の進歩は,遺伝子そのものを治療に応用する遺伝子治療の概念を現実のものとしてきた.米国では非小細胞肺癌や頭頸部癌を対象にウイルスベクターを用いたp53遺伝子治療の臨床試験が進行中であり,今後はその適応が大腸癌などの消化器系の悪性腫瘍や脳腫瘍,乳癌などに広がっていくと思われる.p53遺伝子導入による遺伝子治療は,難治性癌に対する集学的治療の一つとして今後の展開が期待される.

キーワード
遺伝子治療, p53遺伝子, アポトーシス, 血管新生, アデノウイルスベクター


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