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日外会誌. 99(7): 457-462, 1998


特集

大腸癌:浸潤・転移の基礎と臨床

12.大腸癌における p21WAF1/CIP1遺伝子の mRNA発現

千葉大学 医学部第2外科

小林 進 , 松下 一之 , 磯野 可一

I.内容要旨
p21WAF1/CIP1はwild-type p53遺伝子により,発現誘導され,Cdkのtight binding proteinとして, GI arrestを惹起し,細胞周期を制御している.大腸癌組織におけるp21WAF1/CIP1mRNA発現をp53遺伝子変異との関係において検討した.
16例の大腸癌切除標本より,RNAを抽出し, Northern blot hybridizationにより, p21WAF1/CIP1遺伝子のmRNA発現レベルを癌部,非癌部において比較検討した.さらにそれぞれに対応する組織からDNAを抽出し,p53遺伝子変異をPCR-SSCP法によりExon5-9につき検討した.
p53の遺伝子変異検出例は6例,非検出例は10例であったが,すべての症例においてp21WAF1/CIP1mRNAの発現レベルは非癌部に比較し,癌部において低く,その発現低下はp53の遺伝子変異検出例で,より顕著であった.また,臨床病理学的進行例(Dukes D)においてその発現低下は高度であった.以上の結果から,大腸癌ではp21WAF1/CIP1遺伝子の発現はp53遺伝子異常あるなしに拘らず,mRNAレベルで抑制されており,発現低下のより顕著な例で進行例が多いことが示された.

キーワード
p21WAF1/CIP1, Northern Blot Hybridization, 大腸癌, mRNA


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