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日外会誌. 99(7): 419-424, 1998


特集

大腸癌:浸潤・転移の基礎と臨床

5.糖鎖と血行性転移

東京大学 医学部腫瘍外科

河村 裕 , 武藤 徹一郎

I.内容要旨
癌の発生,進行に伴い癌細胞には様々な変化が起こる.正常細胞の表面に発現されている糖鎖にも変化が認められ,進行に伴い発現の増加するもの,低下するものが報告されている.この糖鎖の変化に着目し,腫瘍マーカーとして診断や治療法の決定に利用することは既に臨床的に行われている.例えば,消化器外科で広く用いられている腫瘍マーカーであるCA19-9は糖鎖を認識する単クローナル抗体であり,CA19-9により認識される糖鎖は接着分子としての働きを有することが知られている.糖鎖がマーカーとしてだけでなく,血行性転移において何らかの役割を果たしているのではないか,という仮説がたてられ,様々な検討が行われてきた.現段階ではこれらの結果には相矛盾し,あるいは混沌とした部分もあるが,本稿ではそれらの概説を行った.また少数であるが,臨床への応用を試み,良好な治療成績を得た報告もみられるのであわせてお示しした.

キーワード
糖鎖, 血行性転移, 接着分子

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