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日外会誌. 99(5): 312-319, 1998


特集

呼吸器悪性腫瘍の最新の治療方針

7.非胸腺悪性縦隔腫瘍の治療方針

名古屋市立大学 医学部第2外科

山川 洋右 , 桐山 昌伸 , 深井 一郎 , 近藤 知史 , 斎藤 雄史 , 藤井 義敬

I.内容要旨
縦隔の,必ずしも胸腺由来でない悪性腫瘍の治療方針について概説した.縦隔原発悪性リンパ腫の主な組織型は,Hodgkin病, diffuse large cell lymphoma,そしてlymphoblastic lymphomaで,ほぼ90%を占める.この他,稀な亜系としてanaplastic large-cell Ki-1 lymphomaと, low grade B-cell lymphoma mucosaassociated lymphoid tissue of the thymus(MALToma)が知られている.限局性のHodgkin病やMALTomaでは,切除されることがあるが,治療の主体は化学療法・放射線療法であり,外科医の役割は,主に悪性リンパ腫の診断と治療方針決定に充分な検体を提供することにある.縦隔神経性腫瘍の悪性例は,大部分が小児の神経芽細胞腫である.成人では悪性神経鞘腫が大部分で多くはvon Recklinghausen病に伴う.前者には化学療法と組み合わせた外科切除が行われ予後は良い.後者は広範囲切除が第一選択であるが,遂行不能例も多く予後は悪い.Dumbell型腫瘍にはアプローチを工夫して脊椎の合併切除を加えて切除されている.縦隔間葉型腫瘍にはさまざまな組織型が含まれるが,血管組織,脂肪組織由来のものが多い.治療方針は他部位の肉腫と同様で,外科切除が中心だが,解剖学的制約のため広範囲切除は不可能なことが稀ではない.その他,縦隔内甲状腺癌,上皮小体癌,転移性癌について述べた.

キーワード
縦隔悪性リンパ腫, 縦隔悪性神経性腫瘍, 縦隔原発悪性間葉系腫瘍


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