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日外会誌. 99(5): 303-307, 1998


特集

呼吸器悪性腫瘍の最新の治療方針

5.両側性多発性転移性肺腫瘍の治療方針

東北大学加齢医学研究所 呼吸器再建研究分野

近藤 丘 , 藤村 重文

I.内容要旨
1975年1月から1997年12月までに162例の転移性肺腫瘍切除例を経験した.その内訳は癌腫93例,肉腫51例,悪性胚細胞性腫瘍(GCT)17例, melanoma 1例であった.このうち初回肺転移巣が単発性であったものは57例で,残る105例では2個以上の多発性病巣が確認された.初回単発性で,その後に新たに病巣の出現を見たものは5例あり,これを含めると多発性の肺転移を認めたものは合計110例(67.9%)であった.癌腫の肺転移では腎癌で多発性の頻度が高かった.癌腫と肉腫では肉腫に多発性病巣を認める頻度が高かった.術前CTでの評価では,病巣数が10個以上になると正確に把握することが困難になることがわかった.手術成績では,単発性のものと多発性のものでは差がなかったが,多発性のものでは肉腫に比して癌腫の成績が有意に良好であった.また,多発性のものについて,一側性のものと両側性のものの間には切除後の予後に有意差を認めなかった.さらに,転移個数による予後の違いも認めなかった.一方,手術時に完全切除できたと判断されたものでは不完全な摘出に終わったものに比して予後は有意に良好であった.以上の結果から,転移病巣が多発性で両側肺におよんでいる場合でも,ほかの臓器に病巣を認めないものは十分に外科療法の適応となることが示唆された.この際,術前の転移病巣の局在と個数をできるだけ正確に行い,完全切除が見込まれることが重要である.また,転移病巣数が多い場合は,とくに肉腫の肺転移において,CTなどでの評価を大きく上回る可能性があることに留意しなければならない.

キーワード
転移性肺腫瘍, 多発性肺転移, 外科療法, 外科治療成績, 手術適応


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