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日外会誌. 99(4): 256-263, 1998


総説

外科栄養におけるn-3系多価不飽和脂肪酸の意義

1) 千葉大学 医学部第1外科
2) 千葉大学 医学部動物実験施設

田代 亜彦1) , 山森 秀夫1) , 森嶋 友一1) , 杉浦 敏之1) , 林 永規1) , 古川 勝規1) , 中島 伸之1) , 伊藤 勇夫2)

I.内容要旨
今日の外科栄養は蛋白・エネルギー管理だけでなく,侵襲反応を起こすmediatorや免疫にも留意する必要がある.N-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)は敗血症や熱傷動物の生存率を上げ免疫能や栄養状態を改善した.また癌の増殖や転移を抑制し癌悪液質を改善した.N-3 PUFAの投与により,侵襲下でも非侵襲下でもn-3系多価不飽和脂肪酸(n-6PUFA)由来のエイコサノイドは低下しサイトカイン産生は低下して,種々の炎症性疾患の症状や侵襲反応を軽減した.細胞性免疫能はサイトカインの低下に伴って抑制されるが,高度侵襲下では賦活される.これは侵襲による免疫抑制がn-3PUFAの投与により軽減されるためと考えられる.これらの効果の機序についてはエイコサノイドによる他,細胞膜のfluidityの変化や接着分子の発現低下などが報告されているが,まだ研究は始まったばかりである.以上,n-3 PUFAは外科領域とくに癌患者や重症患者の管理に有用であり臨床応用されると思われる.

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