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書誌情報]
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日外会誌. 99(4): 234-240, 1998
特集
肝細胞癌外科治療の現況
7.術前門脈塞栓術の導入
I.内容要旨肝細胞癌に対する経皮経肝門脈枝塞栓術(PTPE)の意義を自験111例における成績を中心に概説した.開発当初は肝癌に対する抗腫瘍効果を期待してPTPEを行ったが,その後経門脈的肝内転移の防止,非塞栓領域の再生肥大による二期的肝切除の安全性向上を目的として,あるいは片側肝葉に多発ないし門脈腫瘍栓を伴った非切除肝癌に対する抗腫瘍効果を期待して広範囲塞栓術を行っている.PTPEに伴う副作用は軽微であり,これに起因した肝不全等の重篤な合併症は経験しなかった.一方PTPE後には門脈圧は上昇し,門脈幹の血流量は減少したが,非塞栓肝の単位体積あたりの門脈血流量は増加した.非塞栓領域においては塞栓領域の体積に応じて肝再生が惹起されたが,その再生能は非腫瘍部の肝炎や肝硬変の程度に影響され,特に肝炎の活動性gradeが3以上の症例では肝再生は不良であった.肝右葉切除への適応拡大を期待して門脈右枝PTPEの施された59例のうち,25例では予後得点の改善が得られなかったため縮小切除や非切除とした.しかしPTPEが原因で手術適応から逸脱した症例はなく,二期的肝切除が施行された症例における術後経過は良好で,PTPEにより手術の安全性が向上した.またPTPE併用右葉切除症例の術後生存率は,PTPE非併用右葉切除症例に比較して良好であった.さらに非切除例においてもPTPEを経動脈的治療と組み合わせることにより遠隔成績の向上が得られた.
キーワード
経皮経肝門脈枝塞栓術 (PTPE), 二期的肝切徐, 肝細胞癌, 肝再生, 新組織分類
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