[書誌情報] [全文PDF] (571KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 99(4): 223-228, 1998


特集

肝細胞癌外科治療の現況

5.肝冷却法による肝切除術

1) 兵庫医科大学 第1外科
2) 中国医科大学 第2臨床学院

山中 若樹1) , 今北 正道1) , 戴 朝六2) , 岡本 英三1)

I.内容要旨
肝切除術の普及と適応の拡大には肝区域解剖の解明と術中出血防止策の工夫がその背景にある.出血防止策としてPringle法を始め,片葉遮断あるいはtotal vascular exclusion(TVE)も考案され,また,肝移植技術を流用した静脈バイパスなどの体外循環もTVEの安全性を高める手段として用いられた.一方では血行遮断に伴う阻血障害を軽減する工夫も必然的に進歩した.そのひとつである肝冷却の歴史は常温阻血安全限界の20分を低体温により60分に延長せしめた1953年の実験報告に始まる.その後臨床では全身冷却(1961)から冷却を肝臓に絞ったTVE併用全肝冷灌流(1971),我々の考案した表面冷却法(1993)あるいはTVEを必要としない片葉冷灌流(1995)と変遷している.最も簡便な冷却手段である表面冷却は1990年10月に開始し,1997年4月まで39例の右葉血行遮断下障害肝合併肝切除例に適用した.この結果,平均60+/-23分の連続血行遮断においても,深部温が20-25Cに低下する冷却例では常温下短時間遮断例と比べて術後肝機能の障害は増悪しないことを確認した.実験的にも表面冷却の付加により阻血後の細胞内Caの上昇が有意に抑制されることを証明した.肝切離に時間を要する複雑な肝切除例においては表面冷却を付加する血行遮断法は安全かつ簡便な工夫のひとつと言える.

キーワード
肝切除術, 潅流冷却, 表面冷却, 阻血再灌流障害, 細胞内 Ca


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。