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日外会誌. 99(4): 214-218, 1998


特集

肝細胞癌外科治療の現況

3.肝細胞癌の外科治療-血管外科の導入-

浜松医科大学 第2外科

中村 達 , 鈴木 昌八 , 今野 弘之

I.内容要旨
肝癌の治療一血管外科の導入一
近年血管外科の立場から肝癌に対する肝切除術について現況を文献的に考察した.
門脈腫瘍栓摘除を併施した肝切除術が本邦で積極的に行われるようになった.この術式は術後食道静脈瘤の破裂を予防し,肝動脈塞栓術を適応可能にする利点がある.山岡らの報告によるとこの治療を受けた29症例の1年および,3年生存率は53%,12%で,同様の患者で肝切除を行わなかった例に比較して有意に予後が改善された.この治療法は従来切除不能とされてきた肝癌患者の予後を延長させる可能性がある.
肝静脈の下大静脈流入部近傍に腫瘍のある例ではS4b,7,8切除兼肝静脈再建が試みられている.この術式は肝静脈の解剖を考慮し,残肝の機能を温存する目的で行われてきた.右下あるいは右中肝静脈のない例では有用な術式である.
肝血行遮断法(HVE)の歴史的発展について文献的に考察した.HVEは肝硬変のある例でもBiopumpRを用いて安全に行われることが示された.右房まで進展した腫瘍栓の摘除は体外循環を用いて試みられてきたが,これまでに2例の2年以上生存例の報告がある.しかし,肝の温阻血時間は60分が限度である.
肝癌の外科的治療において門脈腫瘍栓摘除兼肝切除,肝静脈再建併施肝切除,HVE下肝切除,右房内腫瘍栓摘除を伴う肝切除などの血管外科を応用した手術が本邦において増加してきた.その結果肝硬変患者においても安全に行われることができることが示された.このような手術を受けた患者の長期予後の改善が今後の課題である.

キーワード
肝細胞癌, 血行再建, 腫瘍栓, 血行遮断


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