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日外会誌. 99(2): 68-72, 1998


特集

心臓再手術の現況

3.再手術における心筋保護法-心臓弁膜症について-

三重大学 医学部胸部外科

小野田 幸治 , 谷 一浩 , 矢田 公

I.内容要旨
心臓弁膜症再手術においては癒着剥離面からの出血を考慮し,出来る限り最小限の癒着剥離に留めることにしている.しかし,その反面心筋保護の点からみれば,topical coolingが十分に行えず,心筋保護液の使用が重要になってくる.
当教室では心臓弁膜症の手術においては,中等度低体温の体外循環,心筋保護法は初回crystalloid cardioplegia, 2回目以降はcold blood cardioplegiaを30分毎に注入し,topical coolingを併用してきた.しかし,1995年よりterminal warm blood cardioplegiaを導入するとともに,心停止中の心筋保護液もBuckberg法に準じた組成に変更し,20分~30分間隔で注入している.再手術症例では左室前面の剥離を最小限に留めているため,topical coolingが十分に行えない症例に対しては確実に20分毎の心筋保護液の注入を行うようにしている.
心臓弁膜症再手術症例において,従来の心筋保護法を用いた症例30例と最近の心筋保護法を用いた症例15例の大動脈遮断解除後の心機能の回復について比較検討した.最近の心筋保護法において大動脈遮断時間が有意に長いにも関わらず,補助循環時間では有意差は認めなかった.また,体外循環からの離脱時のdopamine使用量は,最近の方法において有意に低下しており,大動脈遮断解除後の自己心拍再開率においても有意に最近の心筋保護法が優れていた.
しかし,現在の心筋保護法においても,肥大心の術後は以前に比べ改善は認めるものの,心機能の低下,不整脈の出現を見ることが多い.これは,肥大心筋の細胞構成成分が非肥大心筋とは異なっていることに起因していることが考えられる.従って,今後は肥大心の細胞レベル,分子レベルでの研究が更に必要であると考える.

キーワード
心臓弁膜症再手術, terminal warm blood cardioplegia, 微小管, 肥大心


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