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書誌情報]
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日外会誌. 99(2): 63-67, 1998
特集
心臓再手術の現況
2.再胸骨正中切開法
I.内容要旨最近では,心臓大血管の再手術症例の増加に伴い,再胸骨正中切開法が行われる機会も多い.本稿ではわれわれの経験を基に,再胸骨正中切開法の適応,手術手技,起こりうる危険とその対処法などについて述べた.
再手術に当たっては,胸部X線側面像,必要な場合には断層撮影,CTによって胸骨と心臓大血管との位置関係などを十分検討しておく.これらの情報に基き,安全性,確実性,侵襲の程度等の視点から他の到達法との優劣を比較検討した上で本法の適応を決定する.
再胸骨切開に先立ち,万一の場合,大腿動静脈を用いてのF-Fバイパスが可能なように準備しておくことが重要である.
再切開は胸骨ワイヤーを胸骨後面に残した状態でoscillating bone sawを用いて切離することで,安全且つ迅速に行うことが出来る.まず胸骨後面の骨膜を全長に亘って剥離し胸骨後面にスペースを作ることで安全に開胸器の装着が可能となる.
心臓の剥離操作の要点は,まず到達が最も容易な心膜の横隔膜から始め,これと右室,右房との剥離を進めて,左右の心膜縁に達する.この際,心臓前面の癒着剥離は,この操作を安全に行うに必要なスペースを確保するためだけの最小限に止める.頭側では,まず無名静脈を全長にわたって露出し,これに沿って上大静脈の部で心膜右縁に達し,次いで上大静脈から左へ向かって,上行大動脈さらに主肺動脈を剥離して行くことで心膜左縁に到達する.左,右の心膜と心臓の剥離は頭側,尾側の両方向から安全に進めることが出来る.これによって心臓を落し込んだ後,前胸壁に癒着している部分を胸壁に接して電気メスをも用いて一気に切離する.損傷を来した場合,その周囲を十分剥離してtensionのかからない状態で縫合することが重要である.
キーワード
再胸骨正中切開法, 心臓再手術, F-Fバイパス
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