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日外会誌. 99(1): 40-45, 1998


特集

広範囲熱傷治療の現況

8.広範囲熱傷の重症度と予後

東京女子医科大学 形成外科

仲沢 弘明 , 野崎 幹弘

I.内容要旨
近年,熱傷ショック期の輸液療法や循環・呼吸管理の進歩にともない,たとえ広範囲熱傷患者においても熱傷ショックによる死亡率は著しく低下している.しかし,広範囲熱傷例では,ショック期を離脱できたとしても,創面からの感染,それに続く敗血症による死亡率は依然として高値なのが現状である.そこで,熱傷の重症度と予後の面から最近報告された東京都熱傷救急連絡協議会の11施設における過去10年間の統計資料を検討した.熱傷の重症度を簡便に示すBurn lndex(以下BIと略す,10~15以上が重症)と死亡率との関係をみると,BI40以上で死亡率が50%,それ以上になると急速な死亡率の増加が認められた.BIに年齢の因子を加えたPrognositic Burn Index(以下PBIと略す)をみるとPBI90~100は死亡率は51.4%とほぼ半数が死亡する事を示した.一方,米国の現況をみるとPruittらの報告から,最近4年間において,若年層と高齢者年齢層の救命率の向上がみられている.特に全身熱傷に近い広範囲熱症例でも,若年層では救命のチャンスがあることを示している.その主因の一つとして,受傷後可及的早期に壊死組織を切除して創を閉鎖するという,超早期手術の有用性が挙げられる.
当科熱傷ユニットでは,1991年から現在まで,15例の広範囲重症熱傷(PBI=94±23)に対し,受傷後24時間以内に超早期手術を行った結果,9例の重症例を救命することができた(死亡率33%).この結果を先の東京都の熱傷統計と比較検討すると,同程度の重症度の患者の死亡率の改善が示された.今後,全国的なスキンバンクの確立とともに,超早期手術がわが国においても普及し,広範囲重症熱傷の治療成績が一層向上することが期待される.

キーワード
広範囲熱傷, 超早期手術, 周術期管理, スキンバンク


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