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日外会誌. 99(1): 31-39, 1998


特集

広範囲熱傷治療の現況

7.広範囲熱傷と敗血症

1) 慶應義塾大学 医学部救急部
2) 済生会神奈川県病院 救急部

篠澤 洋太郎1) , 田熊 清継2) , 相川 直樹1)

I.内容要旨
広範囲熱傷患者の予後は,急性期重症ショックの治療の確立により,SIRS, sepsisに続発した合併症に左右されるといっても過言ではない.熱傷剖検例の検討では約75%がsepsisであったとの報告もある.より広範囲の熱傷患者で熱傷創感染に由来するsepsisの発症頻度は高いが,近年,早期焼痂皮切除の普及により創感染に由来するsepsisの減少傾向とともに,呼吸器感染に由来するsepsisが増加している.
sepsisは受傷後5日~1週間以降に発症するとの報告が多く,受傷早期のSIRS状態後の続発性免疫不全状態(CARS:compensatory anti-inflammatory response syndrome)が主たる発症要因である.宿主の周囲に存在するS. aureus(MRSA),P. aeruginosaが病原菌となることが多いが,近年,真菌sepsisも増加している.sepsis類似の病態は,腸管の透過性亢進による腸管内細菌,エンドトキシンの門脈系,リンパ系に移入(BT:bacterial translocation)によっても惹起される.
sepsisの病態は,生体防御には必須である単球系サイトカイン,顆粒球系メディエイタの過剰産生,遊離とともに,これらに拮抗する内因性拮抗物質とのインバランスに因ると考えられる.病態学的には血管内皮傷害,凝固亢進(DIC),臓器障害(MODS:multiple organ dysfunction syndrome)などが惹起される.
sepsis予防対策としては院内感染対策,感染経路の遮断(局所抗菌剤,壊死熱傷創早期切除・植皮術,人工呼吸器からの早期離脱,清潔な呼吸管理,カテーテル・カニューレの定期的交換),全身的化学療法などが挙げられる.早期からの経腸栄養(BT対策にもなる)による免疫能の賦活とともに,MODS防止目的のメディエイタ対策の臨床応用が期待されている.

キーワード
熱傷, 敗血症, sepsis, 創感染, メディエイタ


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